【スタッフ座談会】訪問リハビリの可能性を広げる! さつきの『言語聴覚士』たち
さつき訪問リハビリステーションは、さつきホームクリニックの在宅医療になくてはならない存在として、宇都宮市・鹿沼市・益子町の各拠点で、日々訪問リハビリを行っています。
はじめは、理学療法士(PT)と作業療法士(OT)が主要メンバーとして立ち上がったさつき訪問リハビリステーションでしたが、言語聴覚士(ST)がメンバーとして加わることで、さつきの訪問リハビリの可能性が広がっています。
今回は、現在さつきでSTとして働く3名と、さつき訪問リハビリステーション部 部長とで座談会を行い、改めて、訪問リハビリにおける言語聴覚士について、”深堀り”してもらいました!
右から、さつき訪問リハビリテーション部 部長 水沼史明(PT)/幕田和俊(ST)/長井久実(ST)/久野瑞紀(ST)※益子勤務
今後もっと、STの役割は大きくなる
在宅医療の中で、STってどんな存在?
「これから間違いなくSTの需要は広がっていくので」
水沼:今後、要支援・要介護の方や在宅療養をされる方も増え、摂食嚥下障害を抱えている人も増えていく中で、訪問リハビリでのSTの役割は大きくなっていくと考えています。
なので、医師との距離が近いことが強みの「さつき訪問リハビリステーション」にも、STを迎えたいと思いました。
実際に、STがメンバーに加わってくれて、在宅医療や訪問リハビリでできることをコツコツ続けたことで、医師や看護師にもどういう時にSTに頼めばいいのかを理解してもらえました。これから間違いなく需要が広がっていくので、さつきとして、しっかりと今のうちから、在宅医療での訪問リハの価値を確立していきたいと思っています。
長井:実際に評価などで患者さまのご自宅へ伺うと、「そういうリハビリ(ST)があるんですね」と言われることはあります。
なので、「飲み込みのリハビリです」とか、「ご飯をうまく食べれるようにするために、ちょっと見に来ました」とか、言葉を分かりやすくして説明するように心掛けています。
幕田:現状では、ご依頼いただく内容として、「食事評価をしてほしい」というものが多いです。
長井:患者さまの現状の食事が安全に食べられているかどうかを見て欲しい、ということですよね。
幕田:はい、それが多いですね。「今の状態で大丈夫だと思います」とお伝えするだけでも、患者さまだけでなく、ご家族にも安心していただけます。
「食事をする際の姿勢や、食事形態、嚥下評価など、その辺を全部アドバイスできるのが言語聴覚士です」と、患者さまやご家族、関係者の方にはご説明させていただいています。
STによる訪問リハビリ
「口腔ケアをして、口の体操をして…」
幕田:患者さまの所へ訪問する時は、大体まずは口腔ケアをして、口の体操、発声訓練をしていただいて、お食事を食べるための準備をする、ということが多いですかね。
そして、実際にご本人が食べたいものが食べれるかどうかを評価するというのが一般的な流れです。
久野:幕田さんのおっしゃる通り、定期的に飲食物を使った評価は繰り返し行っていますね。また普段の食事状態を全て把握できるわけではないので、患者さまによっては、ご家族または施設の方にご協力をいただきながら動画を撮っていただき、評価することもあります。
STとして心がけていること
久野:患者さまに対しては、基本的に、自分からみて人生の先輩方なので、尊敬の気持ちを持ちながら接するようにしています。
長井:患者さまのご希望をお聞きして、それに合わせてリハビリをやりましょう、という感じですすめています。患者さまもご自宅では、暮らしに合わせて自由にやりたいことが出来ると思うので、私がそれに合わせていく感じです。
久野:「寄り添う」感じですよね。
「楽しい雰囲気作りを大切にしています」
長井:その言葉です(笑)
あとは、「楽しくリハビリできればいいな」という想いがあって、楽しい雰囲気作りを大切にしています。リハビリが苦しいものにならないように、楽しく、言語リハや飲み込みのリハができるように心掛けています。
水沼:やっぱりご自宅なので、あまり堅苦しい雰囲気というよりは、楽しいほうがいいですよね。
幕田:私は、しっかりリハビリをして、少しでも良くなってもらいたいと考えているので、しっかりとした根拠があってリハビリの効果があるというエビデンスを意識しています。
また、患者さまに合わせて様子を見ながら、こちらからの押し付けにならないように気をつけています。どんどん積極的にやりたい方だったら、「これも良いと思います」とか「こういうリハビリもあります」とかアドバイスさせていただくこともあるし、情報は偏らないようにしています。
久野:あとは、さつきにきてからは院内だけでなく、院外のケアマネジャーさんや、施設さん等との連携の必要性もより強く感じるようになりました。
水沼:久野さんは「さつき訪問リハビリステーション益子」の立ち上げメンバーでしたが、最初は色々と大変でしたね。
久野:大変でした。まずは地域のケアマネジャーさんに顔を覚えてもらおうと思いましたが、STのイメージがまず付きにくい。「どういうときに頼んだらいいの?」と聞かれることもありました。
でも、徐々にケアマネさんやさつきホームクリニック益子の医師から声を掛けていただくようになり、例えば「経鼻経管栄養で退院してご自宅で療養されている方について、ご家族としてはできれば食べさせたいからみてほしい」とか、失語症の方についてとか、具体的に依頼が来ることが多くなっています。
言語聴覚士のリハビリについて紹介するさつきオリジナルのチラシ
まずは「気軽にご相談して下さい」というスタンスで、チラシを作るなどして、できるだけハードルを低く、分かりやすく、お声がけさせていただくようにしています。
食事については医師を交えて話すことが多いので、間に入ってやりとりさせていただくこともできます。
『さつきの訪問リハビリ』だからできること
さつきで働くことを選んだ理由
幕田:私の一番の理由は、水沼さんに誘ってもらったことです。
以前から研修などで面識があり、その中で教えていただいたさつきの訪問リハビリの事例が印象的で…。
水沼:覚えてます!
「絶対にさつきに入りたいと思うくらい魅力的でした」
幕田:看護師さんや多職種で訪問して、支援してみたいなエピソードを聞いて、すごくかっこいいなと。私にとっては衝撃的で、さつきの一員になりたいなと思いました。絶対にさつきに入りたいと思う魅力的なエピソードでした。
長井:私は、回復期リハビリテーション病棟に11年間勤務していたのですが、リハビリに入る期間が最大6カ月という中で、「あともうちょっとでごはんが食べられたのに」というところで転院したり、ご自宅に帰られた患者さまが、その後どうなったのかよく分からなかったりということがありました。
なので、より長い期間関わることのできる在宅医療に魅力を感じました。
それと、私が知っている患者さまが退院後、さつきが診療とリハビリで入ることになって…。
久野:そうなんですか!
「さつきホームクリニックってどんなところなんだろう?」
長井:はい、それでさつきホームクリニックってどんなところなんだろう? と調べていくうちに、スタッフのチーム連携の良さ、医師・看護師の雰囲気の良さがホームページからもすごい伝わってきて。
インスタとかも見てましたよ(笑)
興味がある訪問リハビリができるというのもあるし、家から職場が近いのもあり、さらに子育てと仕事が両立できる環境でもあり魅力でしかなかったです。
久野:(子育てと仕事の両立は)大きいですよね。
長井:はい、色々とタイミングがあって、「ここしかない!」ということで、来させてもらいました。
久野:以前は施設で働いていたのですが、訪問リハビリをしている同僚のPTさんから、支援している患者さまの食事について「食事でむせていて、ご本人・ご家族が困っている状況なのだけど、何かできることはないかな?」と相談されたことがありました。当時は直接見に行けない状況だったため、分かる範囲で提案をしましたが、“あの提案で良かったのか?”とモヤモヤだけが残って…。
いつか訪問リハビリの現場で働いて、食事で困っている方々を支援していきたい!という思いがありました。そんな時、元々知り合いだったさつき訪問リハビリのPTさんから、“益子で訪問リハを立ち上げる”というお話があったのでさつきのホームページを調べてみたら、月永先生のメッセージにある「あきらめない医療」という言葉にとても感銘を受けたんですよね。
ホームページに掲載されている月永理事長のメッセージ
久野:安全に食べられることを大切にしながらも、患者さまのためにできることをやっている事例を見せてもらって、リハがやっていいことが広がる環境なんだなと思いました。私としては、もう魅力でしかなかったです(笑)
自分としては時短勤務になるし、不安もありましたが、水沼さんや人事の方と相談しながら、すごく寄り添ってくださって、入りやすかったというものあります。
実際にさつきで働いてみて
「連携のタイムラグが少ないのは大きいですね」
長井:スタッフ間でLINE WORKSを使って情報共有できるのがいいですよね。医師や看護師にも、直接話せなくても報告がスムーズに行えるので、会えなくても距離の近さを感じます。
水沼:やっぱり連携のタイムラグが少ないっていうところが大きいですかね。さつきの場合は法人内での医師と訪問リハビリとの距離が近いのが強みかなと。
長井:そうですね、相談もしやすいです。
幕田:さつきの訪問リハビリでは、STとして食事評価を行いますが、日々の患者さまの生活を支えていくためには、みんなでみていくという感じがすごく強いです。医師や看護師、訪看のスタッフもみんなが食事のことを気にされていて、一緒に考えられているというのを感じます。
水沼:この前も医師から嚥下評価をみたいから、訪問診療への同行を依頼されたケースがありましたよね。
「すごく緊張しましたが…」
長井:すごい緊張しました(笑)
でも、実際に様子をみてもらって、「これなら飲めるね」「食べられるね」と、その場で医師に飲み込みの様子を分かってもらえるのは意味が大きかったなと思います。先生にも、患者さまの「食べたい」というご希望になるべく寄り添って考えていただけているので。
久野:ご自宅だと、ご家族が、患者さまの好きな料理を用意して下さったり、「食べたい」と思うタイミングで出してくれたりするので、ご本人の希望にそって、食べていただくことができるかなと思います。
経鼻経管栄養の方や食べることが困難な方が多いですが、訪問診療で診ている医師にも、評価やリハビリの結果を報告して相談しています。
長井:訪問リハビリだと週に何回かのリハビリになりますが、ずっと長い目でみられることもあり、ここまで回復できるんだなっていうのも感じます。
水沼:半年や一年、人によっては数年をかけて伸び続ける患者さまもいるので、実際に訪問リハビリをしてみないと分からないことがありますよね。
「患者さまが生き生きしている様子が目に見えて分かります」
久野:生活場面でこういうことがありました、ここまでできるようになりました、というのが目に見えて分かるので、ご本人に寄り添ったリハビリってイメージが自分も付きやすいし、すごくやりがいがありますね。
「食事をむせることなく食べられましたよ」とか、失語の方で「選挙に行ってみました」とか、軽度の麻痺がある方が枝の剪定をやってみたとか。
生活の中での活動場面が聞けたり、こうやったんだよって写真を見せてくださったりとかした時に、その方が生き生きしている様子が見れると、こちらも、「あぁなんか関わってよかったな」と思うし、「もうちょっとこれにもトライできるかもしれない」と提案の内容も幅広くなり、楽しいなと感じます。
患者さまご家族に対してのフォロー
幕田:私は、ご家族に対しても、できるだけ明るくというか、そういう風には意識しています。
水沼:明るく振る舞うということ?
「ご家族にとっても安心できる時間になればいいなと」
幕田:はい、そこを意識しています。昨日も、長井さんのリハビリに同行した時に、長井さんがご本人に、「いいですね!」とか「がんばってますね!」とかちょっとでもがんばってもらえるように声掛けをされていて。
もしかすると、ご家族からしてみれば慣れ慣れしいとか、そういう風に思われてしまうかもしれないですが、ご本人もそうだしご家族にとっても、リハビリスタッフが来ることで『安心できる時間』みたいな風になれればいいかなと思っていますね。
長井:ご家族との距離も近いので、リハビリへの想いがご本人とご家族で少し温度差が出てしまうこともあります。
水沼:それぞれの状況によって対応も異なりますよね。
久野:そうですね。私は大丈夫であれば、ご家族にリハビリをしている所に同席してもらうこともあります。ご家族の協力や応援をもらいながらやることでご本人がやる気になれることもあるし、それで本人が不快じゃなさそうだったらそのパターンで続けたり…。ケースバイケースな対応になりますよね。
これからの目標
さつきホームクリニックの中でSTが期待されていること
「STのサポートが当たり前の世界になってほしい」
水沼:シンプルに、病院から家に帰ってくる方の、「食べる」「飲む」ところをSTがサポートすることが当たり前の世界になってほしいですね。
さつきが担当している利用者さま、どんな状態でも、やっぱり食べたり飲んだりって人が生きる上での基本や土台じゃないですか。その、土台に関われるのが、医者・看護師・ST・PT・OTといて、そこで医者と看護師と一緒にSTが入れるというのは、一般的にはまだ当たり前の環境ではないけれど、さつきならできるし、やるべきだと思うので。
とにかく摂食嚥下障害がある方、もちろん失語症のある方にも、STが当たり前に関われるっていう環境を作っていきたいですね。
長井:そのために、まず、STっていう『飲み込みのリハビリ』がいつでも見に行けますよっていうことを知ってもらえるのが大事ですかね。
多分まだまだ知らないご家族、利用者さまがいると思うので。
「困ったらいつでも行けます!」っていう、そういう感じです。
水沼:そこが当たり前になってくれば、リハビリの需要を拾いやすくもなりますよね。
久野:私は、「さつきのSTだからお願いしたい」って思われるような、益子でもそういう風に思われるような存在になりたいなと思っています。
さつきのSTが入ったことによって、ちゃんと情報も共有して、連携も能動的に図ってくれる頼りになるSTだなって風に思われたいな、と。それがきっかけで依頼が来るのが理想だなとは思ってます。
なので、そういう意味では自己研鑽もしっかりしていかなくちゃなって自分にプレッシャーをかけながらやっています。
幕田:私は、『STだから嚥下だけ』じゃなくて、食べられたからその後こうしてみましょう、こういってみましょうとか、もっと視野を広く活動・参加できるようになっていきたいですね。他との連携ももちろん良いですが、STだけでも、食べられたこと・話せるようになったことで、その次のステップまでも支援できるように進めていければいいかなぁと。
まだまだちょっとそこは勉強中ですけど、目標は食べる事だけにとどまらずに、「STが入ってくれてよかった」という風になれるといいかなって強く思いますね。
水沼・久野:すばらしいですね!
長井:さすがですね!
水沼:STの支援があったからこそ、その人の暮らしが豊かになるとか生活の幅が広がるっていうきっかけに、STがなれたらいいなっていうのはすごく思います。
他に3人なんか言い残したことあります?
幕田:3人で仲良くやってますよね。
久野・長井:そうですね!頑張っています!
2024年3月取材 文・編集・撮影 広報